トリコモナスとは
トリコモナスは、原虫という肉眼では見ることのできない微生物が性器に感染して、炎症が起きる性感染症の1つです。
主に性交渉によって感染しますが、他人と共有するタオルや下着、浴槽、便座なども感染ルートとして挙げられます。
そのため、公共の浴場などでも感染する恐れがあり、小さな子どもや性交渉を経験したことがない方の感染リスクが高いです。
また、感染リスクを高める要因として、コンドーム未着用の性交渉や不特定多数との性的関係も考えられます。
主な症状には、男性の場合は尿道炎、女性の場合は腟炎や膀胱炎がありますが、自覚症状に乏しい感染者が多いことも特徴的です。
潜伏期間
トリコモナス症は、原虫による感染から約10日。一方で、大半は症状に乏しいため、正確な感染時期を知ることは難しいとされています。
トリコモナスの原因
トリコモナス症の原因は、腟トリコモナス原虫です。原虫が尿道や腟内、前立腺などに感染して、トリコモナス症を発症すると考えられています。
トリコモナス原虫が感染する部位は男女で異なり、男性では精嚢や前立腺、尿道に感染し、女性では腟内や子宮頚管、尿道などに感染が生じます。
そのため、トリコモナス症の症状には男女で違いが見られます。
ペット(犬・猫・鳥)もトリコモナス症を発症します
トリコモナス原虫によるトリコモナス症は、犬や猫、文鳥などのペットにも見られることがあります。
ただし、人間とペットでは、原因となる原虫の種類は別になります。人間では、腟トリコモナス原虫が腟や尿道に感染するのに対して、ペットではトリコモナス原虫が腸内に感染して発病します。
それぞれ原虫の種類が異なるため、人間やペットで生じたトリコモナス症が、双方の感染を引き起こすことはないと考えられています。
おりものの臭いで感染がわかる?
トリコモナスの症状
トリコモナス原虫が感染する部位は、男女による違いがあるため、見られる症状も男女で異なります。特に女性は、男性よりも重い症状が現れることが知られています。
ただし、トリコモナス症に感染しても大半は症状が見られないため、自覚しないまま感染を広げてしまう場合も少なくありません。
感染の可能性が考えられる時は、医療機関への受診が推奨されます。
女性に起こる主な症状
女性のトリコモナス症では、主に下記のような症状が現れます。
女性がトリコモナス症に感染すると、特徴的なおりものの変化が生じます。
悪化すると卵管炎症を引き起こし、流産、早産や不妊へと繋がる恐れがあります。検査は、感染から24時間以上過ぎれば行えますので、悪臭を伴う泡状のおりものが見られた時には、医療機関を受診してください。
妊娠中にトリコモナスに
感染してしまった場合は?
妊娠中は抵抗力が落ち、腟の自浄作用も低下しやすいため、トリコモナス症感染のリスクが高まります。
トリコモナス症は、母子感染の恐れはないものの、早産や早期破水に繋がると考えられています。妊娠中に感染が分かった時は、速やかに治療を始めましょう。
トリコモナス・カンジダ
・クラミジア
症状の違いは?
おりものの変化や陰部のかゆみなどが生じるトリコモナス症を、カンジダやクラミジアと誤認する方が多くいらっしゃいます。これは、おりものの状態から判別できる場合があります。
違いは別にして、おりものの異常は、原因となる疾患が隠れている可能性が考えられます。いつものことと放置はせずに、必ず婦人科や性感染症内科などへの受診をお勧めします。
- トリコモナス症:
強い異臭のする泡状のおりもの - カンジダ:
酒粕やカッテージチーズのような
白くボロボロしたおりもの - クラミジア:
粘り気のある白っぽいおりもの
トリコモナスの検査
尿検査や腟ぬぐい液による検査を行います。結果は5日~7日程度で分かります。
検査を受ける方
- 生理中や妊娠中の方は、腟ぬぐい検査を受けることができません。
生理中の方は、生理が終わってからの検査をお勧めします。
妊婦の方は、婦人科にご相談ください。
なお、生理期間中や妊娠中でも、採血や咽頭検査による検査は行えます。 - 抗生剤を内服している期間は、検査精度に影響が出る恐れがあるため、服用が終わってから2週間以上空けて検査をお受けください。
トリコモナスの治療
抗原虫剤や腟剤の処方
抗原虫剤による治療を行っている間は、アルコールの摂取を控えてください。
薬の作用でアルコールの分解に時間がかかり、泥酔状態やアルコール中毒に繋がる恐れが高まります。
また、トリコモナス感染は検査を受けても判明しない場合がありますので、パートナーの感染が分かったら、治療を行うようにしましょう。
なお、症状が見られる時は、検査の判定前でも治療を始めることができます。
トリコモナスの予防
- 性交渉時は、確実にコンドームを使用する
- 特定のパートナー以外との性交渉を避ける
- 感染している方との入浴やタオルの共用を
避ける - 腟の自浄機能が低下する生理中は、
トリコモナスに感染しやすいため
性交渉は控える - 温泉施設などを利用する際は、
温泉やプールから上がったら
身体を丁寧に洗う、
お尻の下にタオルを敷いて椅子に座るなど、感染防止に努める