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陰部(性器)の痛み

陰部(性器)が痛む方へ

陰部(性器)が痛む方へ

ナプキンや下着による摩擦のほか、ホルモンバランスの変化によってデリケートゾーン(陰部)は敏感になりやすく、腫れや痛みを引き起こすことがあります。
明確な原因が分からないまま、ズキズキ、ヒリヒリ、チクチクといった痛みを感じる場合は、何らかの疾患が潜んでいる可能性があります。
デリケートゾーンの痛みには多くの原因が考えられますので、医療機関での診察が必要です。

女性の性器痛の原因
~原因は大きく3つ~

女性の性器痛の原因陰部(性器)の痛みを引き起こす原因の1つ目は、日常生活で身につける機会が多い用品などです。月経時に使うナプキンによる擦れや蒸れなどでかぶれて、痛みに繋がる場合があります。また、他の生理用品や吸水シート、下着、避妊用品などによってかぶれやアレルギーが生じて、痛みや違和感を覚える時もあります。

2つ目は病気によるもので、重い生理痛が生じやすい月経困難症や子宮内膜症が挙げられます。
その他、出産時の会陰裂傷による痛み、加齢に伴う萎縮や筋力の衰えで起きる子宮下垂や子宮脱など、年代によって考えられる病気は異なります。

3つ目の原因は感染症で、性感染症も含まれます。おりものの量の増加や状態の変化、びらん、潰瘍などが起きる恐れもあり、不妊などのリスクが高まる場合もあります。
性感染症では、症状が一時的に治まる時もありますが、自然治癒は望めないため早期に最適な治療を行うことが大切です。

日常的な原因

  • ナプキン、おりものシート、
    吸水シートによるかぶれ
  • 下着による擦れやかぶれ
  • アレルギー反応

など

傷・疾患

  • 月経困難症
  • 子宮内膜症
  • 会陰切開の傷
  • 腟萎縮
  • 子宮下垂
  • 子宮脱

など

性交渉や自慰行為による 刺激でも痛みを感じます

性交渉や自慰行為によって腟に摩擦などが生じると、小陰唇、包皮、会陰部、腟入り口、腟前庭といった箇所に痛みや腫れが起きる場合があります。
感覚が鋭敏な陰部は、1mmにもならない微細な傷であっても痛みが生じます。

痛みの原因が性交渉や自慰行為であれば、最も痛みを感じるのは行為の直後であり、1~2日経つと和らぐと思われます。
しかし、痛みの増強や腫れの悪化が見られる時は、雑菌による感染が起きている恐れがあります。

陰部痛の原因となる 感染症や疾患

多様な疾患によって陰部に痛みが生じます。 ここでは、原因となる疾患とその対処法についてお伝えします。

性器クラミジア感染症

クラミジア感染症は、クラミジア・トラコマチスによって起きる日本で最も感染者の多い性感染症で、口腔性交を通じてのどにも発症します。1回の性交渉で30~50%が感染すると見られています。
また、症状が現れない方が半数以上いるため、感染を自覚しないままパートナーにうつしてしまうケースも多くあります。さらに、潜伏期間中も周囲に感染させる恐れがあり、自覚症状がなくても身体内で感染は拡大していきます。

女性では、痛みが生じる部位が尿道や腟から骨盤内、下腹部、上腹部へと少しずつ広まり、肝臓表面で炎症が生じるとより強い痛みを感じる場合もあります。

なお、交互に発症するピンポン感染を予防するためにも、パートナーと一緒に検査と治療を行うことが重要です。

淋菌感染症(淋病)

淋菌感染症(淋病)は、淋菌によって起きる性感染症で、クラミジアと同様に多くの感染者がいると言われます。性交渉や口腔性交を介して広がり、1回の性交渉で30~50%感染する一方で、淋菌は人体を離れると感染力がなくなるため、タオルや浴室の共有によってうつることはほぼありません。

多くの場合、女性は初期症状が見られないため、子宮や腹膜などに感染が広がり下腹部痛が生じて分かるケースがあります。
自然治癒は期待できず、放置すると不妊に繋がります。また、淋病にかかった妊婦は早産や流産が起きやすく、産道を通じて新生児に感染すると、最悪の場合死に至る恐れもあります。

淋病とクラミジアの同時感染例も多くあるため、気になることがあれば早めに当院をご受診ください。

性器ヘルペス

性器ヘルペスHSV-1とHSV-2の2種類がある単純ヘルペスウイルスによって、皮膚や粘膜に症状が現れます。このうち性器ヘルペスは、主にHSV-2が既感染者との性交渉を介して感染します。

潜伏期間は約2~10日で、痛みを伴う小さな水疱が生じて、その後、水疱が破れて潰瘍を形成すると痛みが激しくなります。その他、頭痛、発熱、便秘、鼠径部リンパ節腫脹などの症状が見られる場合があります。抗体が作られると、約3週間~1ヶ月で症状は治まりますが、ウイルス自体は体内に存在し続けるため、抵抗力が落ちた時に再び発症しやすくなります。

再発は通常初回より軽症ですが、全身倦怠感、水疱や潰瘍の形成が生じます。
なお、症状が見られない期間も、粘膜や性器のウイルスによって感染力は続いています。ただし、抗体の存在が発病の防止に繋がるかもしれません。

ベーチェット病

ベーチェット病は、皮膚などに繰り返し慢性炎症が生じる膠原病類縁疾患の1つです。
現時点で、原因は明らかではありませんが、身体を守る免疫機能に障害が起きて発症すると考えられています。

初期症状としては、目の充血、飛蚊症、口内炎などが見られます。陰部では、赤みのある口内炎様の湿疹ができ、やがて痛みのある深い潰瘍に移行する場合があります。また、歩行や排尿時に強い痛みを生じる方もいます。人によって異なりますが、目、口腔、皮膚、性器などの同時発症や、関節炎の他、消化器、血管、中枢神経などに炎症が生じるケースもあります。
なお、一定の基準に該当する方は、指定難病に認定され国による医療費支援を受けることができます。

帯状疱疹

帯状疱疹は、水痘・帯状疱疹ウイルスによって発症する50代以降の方に多い疾患です。
水ぼうそうに感染すると、ウイルスが体内に残るため、疲労の蓄積や加齢などで抵抗力が落ちた時に症状が出現します。
最初は、痛みもピリピリする程度ですが、次第に増強します。通常、身体の左右どちらかに帯のように赤い水疱が広がり、強い痛みのために睡眠を妨げる場合もありますが、多くは約3~4週間で軽快します。

ただし、全身倦怠感や39℃以上の発熱、顔面神経麻痺、難聴、失明などの深刻な症状に繋がるリスクもあるため、早期の医療機関受診が望まれます。
また、陰部に症状が生じた場合には、抗ウイルス薬や軟膏による薬物療法が行われます。

粉瘤

粉瘤(ふんりゅう)とは、皮下にできた袋の中に角質や皮脂が溜まった良性腫瘍です。
丸みを帯びて盛り上がり、先端に開いた小さな穴が黒い点のように見えるものもあります。
軽いものでは、痛みを伴うことは稀ですが、傷口から細菌感染すると炎症が生じて、押した時の痛みや腫脹が生じる場合があります。

中の膿が破れて出てくることもあり、サイズが小さくなって治ったように思われますが、時間の経過と共に再び粉瘤ができます。
様々な原因で形成される粉瘤が自己治癒することは滅多になく、放っておくと次第に大きくなる場合もあるため、手術で除去する治療をお勧めします。

前庭部痛

前庭部痛とは、性交渉の挿入前や性交渉の時に腟の入口辺りに痛みが生じるもので、性交痛の1つです。
現時点で、原因は明らかではないものの、外陰部で感じる痛みの伝達と処理に関わる神経と脳の変化によって、痛みに対して鋭敏になっているのではないかと言われています。
また前庭部痛は、性交痛という悩み以外に、性感染症による症状の可能性も考えられます。再発しやすい腟カンジダ感染症では、前庭部痛が生じて進行する恐れもあるため、症状が気になる場合は当院までご相談ください。

陰部の痛みの診断・鑑別

陰部に痛みが生じる疾患は様々あるため、正確な診断によって区別することが欠かせません。
性器ヘルペスとベーチェット病は、共に潰瘍形成と高熱が現れるため、鑑別が容易ではありません。
性器ヘルペスは、初期症状で水疱が現れ、浅い潰瘍へと進行します。
一方でベーチェット病は、強い痛みを伴い、潰瘍が深くなるという違いがあります。
帯状疱疹は、通常身体の左右一方に帯状に広がる発疹と痛みという特徴が知られています。
粉瘤は、水疱や潰瘍ができることはなく、大半は形状の変化だけですが、感染により炎症が生じると発赤や腫脹を呈し、化膿する場合もあります。

陰部の痛みの治療

陰部の痛みの治療性器ヘルペスの治療は、主に抗ウイルス薬の内服や軟膏による薬物療法が行われます。重症例では、点滴による治療を選択する場合もあります。ウイルスを除去することはできませんが、薬を用いた再発抑制治療が有効です。

ベーチェット病は、再発と寛解を繰り返す疾患のため、治療の目的は発症の抑制と症状の緩和です。病状やご希望に合わせて、ステロイド薬を含めた内服薬や外用薬、粘膜保護薬、他の治療薬を用います。
帯状疱疹の場合、痛みや湿疹には痛み止めや抗ウイルス薬が処方されます。帯状疱疹後神経痛には鎮痛薬を使用し、陰部症状に対しては、抗ウイルス軟膏薬にてウイルス増加を防ぎます。
粉瘤が炎症化した場合には、抗生物質による薬物療法や部分麻酔で切開して膿を出す処置が行われます。

予防と注意点

陰部の痛みの大半は感染によって生じるため、早期に治療を行うことで軽快します。
ただし、繰り返し発症する病気もあり、日頃の対策と感染予防が欠かせません。当院は女性医師が婦人科の診察を行う日もございますので、お気軽にご受診ください。

陰部の痛みは何科を受診する?市販薬は使ってもよい?

下記に、デリケートゾーン(陰部)に痛みが生じた時に受診をお勧めする診療科や、市販薬の情報をお伝えします。

女性の陰部の痛みは 何科で受診?

  • 婦人科
  • 産婦人科
  • 皮膚科

腟内の診察は婦人科または産婦人科で行います。幅広くデリケートゾーン(陰部)のお悩みに対応可能な婦人科や産婦人科の受診をお勧めします。

陰部(デリケートゾーン)の痛みに市販薬は使える?

デリケートゾーンに痛みが生じた場合、原因によっては抗炎症や抗菌成分を含む市販薬が有効な時もありますが、専門医による診断と治療が欠かせない疾患もあります。
症状だけでは区別のつかない病気もあるので、陰部の痛みを感じたら必ず医療機関で診察を受けるようにしましょう。