女性器周辺や外陰部に「できもの」ができたら?
様々な疾患が原因となり外陰部にできものが生じます。放置すると次第に大きくなり、痛みが強くなります。疾患自体がひどくなる恐れもありますので、デリケートゾーンのトラブルに気づいた方は、お早めに医療機関の受診をお勧めします。
受診の目安
- できものに痛みがある場合
- できものがイボの様に見える場合
- 徐々にサイズが大きくなっている場合
できものやしこりが起こる感染症・疾患
毛嚢炎、毛包炎
細菌が毛包に感染して症状を示す疾患で、原因菌として黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌、溶連菌や真菌が挙げられます。
スポンジやタオルなどで擦ってできた傷や汗、ステロイド薬の塗布などによって生じ、生理期間やムダ毛を自分で処理した後などに見られることが多いです。
主な症状は、毛包部分の赤いポツポツした湿疹、膿が溜まった湿疹です。かゆみはあまりなく、触れた時に痛みを伴うことがあります。
治療は抗生物質による薬物療法を行います。予防するためには、皮膚に傷を作らないようにする、肌に触れる物は低刺激の素材にする、衣類や下着で締め付けず通気性を良くする、入浴後はしっかり身体を拭く、トイレの後は傷に注意して丁寧に拭くことなどが大切です。
バルトリン腺嚢胞
腟口の近くにあるバルトリン腺の開口部が、傷や炎症によって塞がれると、分泌液がバルトリン腺内部に溜まり、バルトリン腺嚢胞を発症させます。
この嚢胞が細菌に感染すると、化膿してバルトリン腺膿瘍へと進行します。
主な原因菌は大腸菌で、他に連鎖球菌やブドウ球菌による感染も考えられます。
できものは初期から見られますが、痛みを感じることはほとんどありません。化膿すると痛み、腫脹、熱感、発熱が生じ、歩行や性交渉などに障害が出る場合もあります。嚢胞が生じても症状がなく、日常生活に影響を及ぼさない場合は治療を行う必要はありません。
一方、感染が生じた時や生活に支障がある場合には、抗生物質や消炎剤による薬物療法、内部貯留液の吸引、切開による排膿などを実施します。再発を繰り返す時は、バルトリン腺の造袋術や摘出術が検討されるケースもあります。
粉瘤
粉瘤は、皮下にできた袋状の構造物に古い角質や皮脂が溜まって生じる嚢腫で、陰部に発生することもあります。
小さな隆起が見られ、強く押すと粘度のある不快な臭いがする液体が出てくる場合もあります。
細菌感染により炎症が生じると、腫脹や発赤、痛みを伴う化膿性粉瘤に移行します。軽症の時は抗生物質を用いて治療を行いますが、病状がひどくなり膿が溜まった膿瘍の場合は、薬物療法だけでは治癒が困難なため、切開による排膿を検討します。
接触性皮膚炎
接触性皮膚炎は、通常かぶれと呼ばれ、ナプキンや下着の繊維などが陰部へ触れることで湿疹ができ、かゆみやヒリヒリ感を伴う疾患です。
刺激が長期化して慢性接触性皮膚炎を引き起こすと、皮膚が厚く硬くなる場合や、コンドームのゴムが刺激となってかぶれる場合もあります。
症状の改善には、原因物質に触れないことが重要です。
予防策として、衣類の締め付けを避ける、綿など低刺激素材を選ぶ、柔軟剤を用いない、陰部の洗浄は刺激を避け洗い過ぎに注意する、布ナプキンを使用する、入浴後は丁寧に体を拭くなどが挙げられます。これらで効果が不十分な場合は、抗ヒスタミン薬、ステロイド外用薬、保湿剤などによる薬物療法を実施します。
性器ヘルペス
単純ヘルペスウイルスが性器や肛門、口唇に感染する疾患です。性交渉以外にもウイルスに接触した手指や物が原因となります。
潜伏期間は2~10日で、初感染時の症状には、外陰部の強い痛み、発熱、倦怠感、排尿時痛、リンパ節腫脹などがあります。特に女性は重症化しやすく、外陰部の水疱や発疹が潰れて潰瘍ができ、強い痛みから排尿や歩行に障害が出ます。
回復後もウイルスは体内に残るため、免疫力の低下は発症に繋がります。
なお、再発時は、かゆみや違和感、小さな水疱などの症状が現れます。潰瘍がある時は周囲へうつしやすいため、タオルや便座、浴場の共有は控えてください。
治療は抗ウイルス剤による治療を行い、再発を繰り返すケースは継続的な治療を実施します。
尖圭コンジローマ
HPV(ヒトパピローマウイルス)の6型や11型への感染で生じる性感染症です。
潜伏期間は3週間~8ヶ月で、性器や肛門、尿道、口腔に痛みのないイボができます。その他、かゆみや性交時痛、違和感などが見られます。イボは自然消失するものが20~30%、3ヶ月以内に再発するものが約25%あると言われています。
治療は塗り薬による薬物療法を行い、効果によっては切除、冷凍凝固術、焼灼治療などを検討します。再発の可能性もあるため、完治するまで治療の継続が欠かせません。
妊婦の感染は、新生児の感染リスクを高めるため、専門医までご相談ください。HPVワクチンは、子宮頸がんだけでなく尖圭コンジローマの予防に繋がると言われています。
尿道カルンクル
尿道の出口に生じて、出血や違和感を現す良性のポリープです。閉経以降の方に発症することが多く、痛みやかゆみ、下着に付いた血液によって自覚するケースが大半だと言われます。治療では、ステロイドの塗布薬による薬物療法が行われます。薬で軽快しない時や、ポリープが大きくなった時、排尿障害が見られる時などは、手術による治療を選択します。
できものに痛みがない場合は問題ない?痛みの現れ方から疑われる原因
陰部のできものやしこりが痛い場合
下記のような疾患が原因で、陰部のできものやしこりに痛みを感じます。
- 毛包炎、毛嚢炎
- バルトリン腺腫瘍(膿瘍化した状態)
- 性器ヘルペス
- 接触性皮膚炎
- 尿道カルンクル
など
毛包炎は、細菌が毛根を包んでいる毛包に感染して生じる炎症で、赤いポツポツとした湿疹や、膿が溜まる膿疱ができます。
軽い痛みのものが大半ですが、うずく感じがする場合もあります。
バルトリン腺嚢胞は、腟入口の両側にある数ミリ程度のバルトリン腺の出口が塞がり、分泌液が貯留したものです。感染が生じると、化膿して痛みを感じるバルトリン腺膿瘍へと進行します。
性器ヘルペスでは、初めて感染した時の症状が重いと言われ、外陰部に生じた水疱が破れ潰瘍になるなど強い痛みを感じます。その他、頭痛、発熱、排尿痛なども見られます。
できものに関するよくある質問
陰部にできものがあります。性感染症が考えられますか?
陰部にできものが見られる時は、原因として性感染症とそれ以外の両方の可能性があります。性感染症ではない場合に多いのは、陰部の常在菌が感染して生じる毛嚢炎です。毛嚢炎は痛みなどを感じるため気付きやすいです。
また、性感染症では尖圭コンジローマや性器ヘルペスなどでもできものは現れます。この場合、医療機関で治療を受けることが大切ですので、性感染症を疑う時は、当院までご相談ください。
下着に付着した血液に気が付きました。何かできものがあるように感じます。
血液が月経や不正出血によるものでない場合、外陰部の毛嚢炎がつぶれたことなどが考えられます。ただし、外陰部にできものが生じた原因を自己判断するのは困難ですので、当院までご相談ください。
外陰部にできたしこりは痛みがないので、放置しても構いませんか?
外陰部のしこりは、たとえ痛みがなくても原因菌が存在します。梅毒や尖圭コンジローマによって生じたしこりの場合、性交渉を介してパートナーも感染する恐れがあり、放置は勧められません。痛みがないため診察に抵抗があるかもしれませんが、病状の進行や感染の広がりを予防するためにも、早期にご受診ください。
デリケートゾーンにできものがあります。持っているリンデロン軟膏を使ってもいいですか?
検査を受ける前に薬を使うことはお控えください。手持ちの薬や、以前の処方薬で自己治療を行う方も見受けられますが、どのような菌や症状に効果があるのか把握できていないまま使用されるケースがほとんどです。診察や検査を受けた上で、ご自身の症状に適切な薬を使用しましょう。