切れ痔(裂肛)とは
肛門の構造について
歯状線
直腸の粘膜と肛門の皮膚の境にあります。
肛門陰窩
歯状線の窪みを指します。
括約筋
内括約筋と外括約筋の2種類ある筋肉で、肛門を閉じる役割を担っています。
肛門のクッション
網目のように血管が広がっており、クッションのように弾力性があります。
切れ痔とは
肛門の皮膚が切れたり裂けたりした状態を切れ痔と呼び、「裂肛」や「さけ痔」と呼ばれることもあります。
最も多い切れ痔の原因は、硬便や太い便が肛門と摩擦することや、下痢便が勢いよく出ることです。
また、肛門の皮膚には痛みを感じる神経が走っているので、発症すると痛みが現れます。
切れ痔は便秘がきっかけで起こることが多く、便秘になりやすい女性は切れ痔に悩む傾向があります。
長い期間便秘が続き、便が硬くなると肛門を傷つけるリスクが高くなります。慢性化した切れ痔によって、便意を感じてもトイレに行かなくなると、さらに便秘が酷くなってしまう可能性があります。便秘で硬い便の状態が続いた場合、肛門の傷はどんどん広がり、痛みも増強します。また、肛門があまり開かなくなって便の通りが悪くなるケースもあります。
切れ痔(裂肛)の症状
肛門をトイレットペーパーで拭いた時にわずかに血が付く、排便に痛みが伴うといった症状があります。
なお、症状の程度は傷がある部位により異なり、あまり痛みを感じない場合もあれば、強い痛みが現れる場合もあります。
切れ痔が慢性化することで、肛門ポリープ、見張りイボ、肛門潰瘍などを引き起こし、中には排便しづらくなるほど肛門が開かなくなることもあるので注意が必要です。
肛門が狭窄した状態で排便を続けると、傷口がどんどん広がっていき、治りも悪くなります。
傷が肛門括約筋に到達すると排便し終わっても痛みが続くようになります。
急性期
便秘などでの硬便が肛門を通過することで起こりやすいです。
症状は、排便の際の痛みや出血などが挙げられ、保存療法を中心に改善を目指します。
排便のリズムを整えて便秘解消する、患部に軟膏を塗る、お薬を使って便を軟らかくするといった方法で経過観察していきます。
急性期に病院を受診して治療を開始すれば、切れ痔が慢性化するのを防げます。
慢性期
切れ痔が長期間続き、傷が同じ部位でどんどん拡大して潰瘍ができたような状態です。
切れた部位の内部で肛門ポリープができたり、外部に見張りイボができたりすると、肛門が狭窄する恐れがあります。
保存療法が行われることが多いですが、手術で治療を行うケースもあります。
なお、見張りイボやポリープの治療法は異なるので、切れ痔の治療とは別で治療が必要です。
切れ痔の手術
急性期の場合、塗り薬などでも効果を得られます。また、下痢や便秘が起きないようにして、再発を防ぐことが大切です。
慢性期で肛門周りに繊維化や瘢痕化が起こると、肛門が狭窄して便が通過しにくくなります。
そのため肛門周りに線維化や瘢痕化がある場合、肛門を広げる手術を行って便が通りやすくする必要があります。
用手肛門拡張術
肛門括約筋が硬くなって、激しい痛みが出ている時に行います。
麻酔を打ってから指で肛門を広げ、肛門括約筋の強張りを解消していく手術です。
裂肛切除術、肛門ポリープ切除
切れ痔の傷が深い場合に行う治療です。肛門ポリープや見張りイボ、切れ痔部位を切り取っていきます。
皮膚弁移動術(SSG)
切れ痔の慢性期や肛門に狭窄が起きたときに有効な手術です。
線維化・瘢痕化した皮膚を切除した後に、欠損したところの近くにある皮膚を移植していきます。
手術費用
当院は保険診療で行っております。
下記は3割負担の方の目安の金額ですが、症状や麻酔の種類で変動するのでご了承ください。
肛門ポリープ切除術 | 外来 約4,000円 |
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裂肛根治手術 | 入院(1日): 約20,000円 |
肛門形成手術 | 入院(1日): 約25,000円 |