おりものとは
おりものは漢字では下り物と書き、月経以外の時に女性の内性器の粘膜から分泌される粘液や古くなった細胞などが混ざったものが腟口から出てくるものの総称で、まさに体内から下ってくる物で、医療用語では帯下(たいげ)と言います。
おりものというと、下着が汚れる、においが気になるなど、マイナスイメージが先になってしまうことも多いのですが、腟口から細菌などが侵入することを防いで腟内を清潔に保つ役割や、排卵時期に精子がスムーズに子宮内に到達し受精しやすくする役割も果たしている、女性なら誰にでもある大切なものでもあります。
ただし、いつもと色や粘り気、においが異なるなど、おりものの異常に気がついた時は何かしらの病気が隠れているかもしれませんので、一度ご相談ください。
おりものと女性ホルモンの関係
エストロゲン(卵胞ホルモン)の分泌量に応じて、おりものの量も増減します。
次の月経との中間ぐらいに始まる排卵期の2~3日間は、エストロゲンの分泌が増えてくるため、自然におりものの分泌も増えてきます。
この時期には、卵の白身のように透明で粘り気のあるおりものが出ることが特徴です。また、妊娠するとエストロゲンの分泌が増えますので、おりものの量が増えるのは通常のことです。
これに対し、排卵期を過ぎて黄体期に入るとエストロゲンの分泌が減少するため、おりものの分泌も減ってきます。また更年期を迎えると、閉経までエストロゲンの分泌は乱高下しながら全体的に減少していくためおりものの量は徐々に減っていき、閉経に至るとエストロゲンが分泌されなくなるため通常のおりものの量は大きく減少します。
おりものの状態
おりものは匂い、色、形状などが生理周期や体調などによって様々に変化します。
生理周期別のおりもの
卵胞期前半(前の月経後7~9日) | 月経の直後はまだ残った経血が混じるため、色は茶色がかった透明で、さらっとしたおりものが少量出ます。 |
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卵胞期後期(前の月経後10~13日) | エストロゲンがゆるやかに上昇し、排卵に向けておりものが増加する時期です。 |
排卵期(前の月経後13~15日前後) | 排卵時にはエストロゲンが最も増え、おりものも最も多くなります。卵の白身のように透明でドロっとしており、においはあまりありません。受精を助ける働きがあります。 |
黄体期(前の月経後16~26日) | エストロゲンは減少しプロゲステロンが増加するため、おりものは減少します。粘り気の強い白く濁った状態になります。 |
生理前(前の月経後26~27日) | 月経の直前にはプロゲステロンの分泌が減り、ふたたびおりものが増えてきます。ドロっと粘ってにおいのある状態になります。また少量の出血が見られる場合もあります。 |
※日程は平均的な28日周期での目安です。
上記のような月経周期に合わせたおりものの変化は自然なものですが、
以下のような異常があらわれる場合や、普段と異なる状態が気になる場合には一度ご相談ください。
このような際には、受診を
- 普段より濃いおりものが出る
- 量が多くおりものシートでは足りない
- カッテージチーズのように白くポロポロとした塊状になっている
- 茶褐色、黄色がかっている、灰色や緑色が混じっている、血液が混じっている
- 生臭い腐敗臭のようなにおいがする
- 掻痒感、発疹、ヒリヒリするような熱さ、痛みなどが伴っている
病気が疑われるおりもの
いつものおりものと異なる場合、色を観察することで疑われる病気がわかることがあります。
おりものの量が多い
おりものの量は増えているが、色やにおいなどはいつもと変わらず異常が無い、また外陰部に発疹や痒みなどもないといった場合、子宮腟部びらんのためかもしれません。子宮腟部びらんは、子宮口にある子宮頸部内の子宮頸管の粘膜が腟側にはみだしているものです。実際にびらんがあるわけではなく、通常の生理現象と考えられているもので、特に心配することはありません。ただし、おりものが多すぎる、不正出血が続くといった場合は、受診を検討してください。
また、初潮の前に一時的におりものが出ることがありますが、それ以前の小児期にはほとんどおりものをみることはありません。また閉経以降は通常のおりものは減りますが、腟内部の組織が加齢による水分不足などにより変化を起こして異常なおりものが見られることがあります。いずれの場合も適切な治療が必要な状態であることが多いため、一度当院までご相談ください。
おりものに臭いがある
おりもののにおいは人それぞれで異なり、一概に判断することはできにくいものです。しかし判断の目安としては、明らかに普段と異なる変わったにおいがする、ウッとなるような悪臭があるといった場合には注意が必要になります。
普段と異なるにおいがする場合は、腟や子宮などで感染や炎症など何かしらの障害が起こっている可能性があります。また、強い悪臭がある場合、タンポンやコンドームなどが残ってしまって腐敗している、子宮内装具に異常があるといったことも考えられます。
また、外陰部や腟内部に痒みや痛みがあるといった場合、性感染症を含む感染性の病気も考えられます。
こうした異常に気がついたら、適切な治療が必要です。恥ずかしいからといって我慢したりせず、いつでも当院までご相談ください。
バルトリン腺のう胞のように内部に粘液などが溜まっておらず、腫瘤や腫れがある場合は外陰部腫瘍の可能性があります。腫瘍の多くは良性のものですが、稀に外陰がんなどもありますので注意が必要です。治療は外科的切除で行うことになります。
バルトリン腺ののう胞ではなく、外陰部にリンパ液が溜まった小さな水疱状のできものができる場合があります。内容物のリンパ液を吸い出す治療や運動療法などを試みますが、大きくなりがちで、その場合、手術療法が必要になることもあります。
基本は医師による内診(視診・触診等)を通して、デリケートゾーンの状態や原因をしっかりと鑑別し、患者様それぞれに最適の治療法を選択することが大切です。
リンパのう胞
バルトリン腺ののう胞ではなく、外陰部にリンパ液が溜まった小さな水疱状のできものができる場合があります。内容物のリンパ液を吸い出す治療や運動療法などを試みますが、大きくなりがちで、その場合、手術療法が必要になることもあります。
基本は医師による内診(視診・触診等)を通して、デリケートゾーンの状態や原因をしっかりと鑑別し、患者様それぞれに最適の治療法を選択することが大切です。