TOPへ

子宮筋腫

子宮筋腫とは

子宮は一番外側が漿膜という膜で覆われ、その下には丈夫で柔軟性のある筋肉でできた子宮筋層が有り、内側は子宮内膜という粘膜の3層構造になっています。このうち子宮筋層にできる良性の腫瘍が子宮筋腫です。原因ははっきりとはしていませんが、女性ホルモンの一種であるエストロゲンの働きで大きくなっていきます。また、1つだけではなく、複数できることもあります。
子宮筋腫は婦人科の病気の中でも最も一般的なもので、エストロゲンに関連しているため、成熟期に入る30~40歳代に多く見られるようになり、成人女性の2~4割が子宮筋腫をもっているという報告もあります。
筋層のどの部分にできるかによって症状が異なるなどの特徴がありますが、閉経後はエストロゲンの分泌が低下するため、筋腫も小さくなり症状も軽くなっていきます。

子宮筋腫の発生場所と種類

子宮筋腫はできる場所によって症状などの特徴が異なります。そのため、筋層の内部の内膜側にできるものを粘膜下筋腫、筋層の内部にできるものを筋層内筋腫、外側の漿膜との間にできるものを漿膜下筋腫と3つに分類されています。

子宮筋腫の症状

  • 過多月経
  • 過長月経
  • 月経痛腹部腫瘤触知
  • 貧血

など

さらに子宮筋腫が大きくなると周囲臓器を圧迫し

症状があらわれず、健康診断などによって偶然発見される場合もあります。しかし、上記の様な症状があらわれたり、不妊や流早産を引き起こしたりすることもあります。症状は筋腫のできた部位や大きさによってあらわれ方も強さも様々です。

子宮筋腫の検査

問診

専門医が問診を行い、月経の状態や症状のあらわれ方などを詳しく伺います。

超音波検査

超音波検査によって子宮や卵巣の状態を詳しく観察します。経腟超音波検査が基本ですが、場合によっては腹部超音波検査で行うこともあります。

子宮エコー検査

内診

医師が触診によって子宮や卵巣に腫れやしこりがないかなどを直接調べます。

その他

子宮筋腫の位置を正確に把握し、その他の病気がないかを確認して、必要がある場合にはMRI検査などの画像検査を検討することもあります。

子宮筋腫の治療法

自覚症状が無く筋腫が小さい場合には、特に治療は行わず、経過観察とします。症状やできた部位、大きさなどによって治療が必要な場合は、患者様の年齢、症状の程度、妊娠・出産を希望するかを総合的に判断し、薬物療法や手術療法など最適なものを選んで治療を行います。

低用量ピルの服用

低用量ピルによって、女性ホルモンのバランスを調整することで、月経時のつらい症状を軽減することや、月経量を減らすことなどが可能になります。また筋腫が大きくならないようにコントロールすることや、小さくしていくことも可能です。次に説明する偽閉経療法と異なり、副作用の骨粗しょう症の心配もありません。

低用量ピル

偽閉経療法

子宮筋腫は女性ホルモンの一種であるエストロゲンに依存して大きくなっていきます。そのため、閉経によってエストロゲンの分泌が大きく減少すると、筋腫は小さくなります。この閉経状態を擬似的に作り出す方法です。
ただし、エストロゲンを人工的に減少させてしまうと、骨粗しょう症を発症するリスクが高まるため、この治療法は半年行って休薬するという形になります。休薬すると筋腫はさらに大きくなり症状も強くなってしまいます。
一般的にこの治療法は手術を待つ間や、自然の閉経までの繋ぎ的なポジションで行うことになります。

手術(筋腫核手術、子宮全摘術)

症状が強く、日常生活に大きな影響があったり、筋腫が一定以上の大きさだったりした場合は手術を検討することになります。筋腫の状態によって、子宮を残せる場合に筋腫のみを切除する「筋腫核出術」、子宮を残すことができない場合には子宮をすべて摘出する「子宮摘出術」のどちらかを選択することになります。

腹腔鏡下手術が適応される筋腫の大きさ

子宮を残す筋腫核出術を行う場合には、筋腫の大きさ、できている位置などによって、身体に負担の少ない内視鏡下で行う手術(腹腔鏡下手術・子宮鏡下手術)と開腹手術のどちらかを選択することになります。
一般的には、筋腫の大きさが7~8cm以内で筋層内筋腫または漿膜下筋腫であれば子宮内腔からの距離があるため腹腔鏡下手術を行うことができます。さらに粘膜下筋腫の場合は、筋腫が小さければ子宮鏡下手術を選択することも可能です。
一方、筋腫が大きかったり、複数存在したりする場合には開腹手術を検討することになります。開腹手術を選択した場合、出血が予想されることもありますので、その場合は事前に自己血貯血をしていただくこともあります。

子宮筋腫は悪性化・がん化する?

子宮筋腫は良性の腫瘍で、悪性化してがんになってしまうことはありません。
子宮筋腫の診断は、通常超音波検査で行いますが、さらに詳細に調べる場合はMRIによる画像検査も行います。この場合は、まず子宮筋腫として間違いないと言えます。しかし超音波検査のみで診断した場合、稀に子宮肉腫という悪性腫瘍が隠れていることもあります。
子宮筋腫は一般的にゆっくりと大きくなっていきますが、急速に大きくなるような場は子宮肉腫も疑う必要があります。大きな筋腫と肉腫の判断は非常に難しいため、MRIや年齢、腫瘍の成長速度などから全体的に判断しますが、それでも区別がつかず、摘出後に初めて確定診断となることもあります。そのため、筋腫は悪性化することはないとはいっても必ず経過観察を続けておくことが大切です。

子宮筋腫があると妊娠や性行為に影響する?

子宮筋腫がある場合でも、さほど大きく無く、症状も自覚がないか軽い場合には妊娠も出産も可能です。しかし、筋腫が一定以上に大きいか、粘膜下筋腫で過多月経を自覚している場合などには、妊娠しにくかったり流産しやすかったりすることもあります。
子宮筋腫ができていても一般的には性行為に問題はありませんが、筋腫ができる位置によっては非常に稀ですが性交時に痛みを感じる場合もあります。

妊娠で子宮筋腫が発見

妊娠による妊婦検査で初めて子宮筋腫が発見されることがあります。その場合でも妊娠にまったく影響が無く、出産に至ることもあります。しかし、できている位置によっては流早産や分娩障害、産後出血などの他、子宮筋腫の変性などが起こることもあります。
多くの場合、経過観察や保存療法となりますが、手術療法を検討するような場合には、どの程度緊急性があるのか、赤ちゃんや母体への影響はないのかなどについて、担当医師と十分に検討した上で決定することをおすすめします。