PMSとは?
月経の始まる日の10日前になるとどうも体調がおかしくなる、肌があれる、のぼせるといった身体的症状やイライラしやすくなる、怒りっぽくなるといった精神的な不調があらわれます。月経が始まるとともに症状が消えてしまうことが続いている場合はPMSかもしれません。
PMSは英語のPreMenstrual Syndromeの略で、日本の医療用語では月経前症候群と言います。症状があらわれる時期は人によって異なりますが、初潮から閉経前まで多くの女性が幅広く何かしらのPMSの症状に苦しんでおり、中にはなかなかPMSと診断できず人知れず悩んでいる方も多いと考えられています。
PMSの症状は200種類以上!
PMSは人によってあらわれ方が異なったり、季節や月によって症状が変化したりします。その不快な症状を累計すると200以上にも上ると言われています。そんな数多い症状の中でも代表的なものとしては、肌あれ、ふきでものやにきび、下腹部痛、下腹部の張り、腰痛、頭痛、乳房の張り、頭痛といった身体症状や、イライラ、怒りっぽさ、落ち着かない、抑うつなどの精神的症状が挙げられます。
PMSの代表的な症状
心の不調(精神的症状)
- ついイライラしてしまう
- いつもより怒りっぽくなる
- つい家族、身内などに八つ当たりする
- ぼんやりしてしまう
- 悲しく涙がでそうになる
- 情緒が不安定になる
- 抑うつ
- 落ちついていられない
- 張り詰めて余裕が持てない
- 集中力が無くなる
身体の不調(身体的症状)
- 乳房の張り・痛み
- 肌荒れ・にきび
- 体重増加
- 下腹部の張り
- 眠気または不眠
- 疲れ・だるさ
- 頭痛・頭の重い感じ
- 腰痛
- むくみ
- のぼせ
PMSの原因
PMSは以下に挙げるような様々な要因が重なって起こることが分かっていますが、今のところはっきりした原因は不明です。
- エストロゲンやプロゲステロンなど女性ホルモンのバランスの変動
- 遺伝的な要因
- 精神安定に関わる脳内伝達物質の分泌量の変動
- マグネシウム、カルシウムといったミネラル分の不足
- ストレスなどの精神的要因
- 運動量の不足
さらに副腎から分泌されるアルドステロンという、水分保持とナトリウムのバランスを調節するホルモンの変動がPMSの発症に関わっていることも報告されています。
アルドステロンが過剰に分泌されると、体内に水分が保持されすぎて、お腹の張りやむくみがあらわれることになります。
PMSの治療
PMSのあらわれ方は人によって異なりますので治療もそれぞれに合わせて最良の方法を選んで行くことになります。一般的には、生活習慣の見直しとカウンセリングなどで身体症状と精神症状の両面のケアを行います。さらに症状が強い場合は薬物療法も検討します。
日常生活でのケア
PMSの場合、生活習慣を見直し、リズムを整えることで、様々な症状を軽くしたり悪化を防止したりする効果が期待できます。そのため当院では、まずは生活習慣の見直しのためのアドバイスを行っています。
生活習慣の見直しのポイントは以下のようなものになります。
- バランスの良い食事を心がける
- 身体に水分が保持されすぎないよう塩分摂取は控えめにする
- 飲酒は控えめにする
- コーヒー、緑茶、紅茶などカフェインの摂り過ぎに注意する
- ウォーキングやジョギングなどの適度な有酸素運動を習慣化する
- 喫煙習慣のある方は禁煙する
月経開始前のいつごろから、どんな症状があらわれたかを記録しておくことで、どのようなタイミングでどのような症状があらわれるのかを予測することができるようになります。これを定期的に習慣化することで、仕事や行事のやりくりがつけられるようになります。
薬による治療
症状が強い場合など、薬物による治療を検討する場合もあります。
PMSの薬物療法では、主に低用量ピル(OC)や低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬(LEP)が用いられます。どちらもエストロゲンとプロゲステロンを低用量配合し、女性ホルモンのバランスに作用する薬で、低用量ピルは避妊目的、LEPは月経困難症やPMSなどの治療薬として開発されたものです。
PMSは原因がはっきりと解明されている病気ではありませんが、排卵による女性ホルモンのバランス変化が発症に大きく関わっていることがわかっています。そのため、これらの薬で排卵を止めることでホルモンの変化を抑制し、辛い症状があらわれないようにしています。
ただし、排卵を止めるために服薬している時期は妊娠しなくなります。もちろん服薬を中止すればすぐに排卵は再開しますが、現在妊活中の女性には処方することができません。
そういった場合や、下腹部痛、腰痛が強い、精神的症状が強いといった場合では、それぞれに応じて、鎮痛薬、精神安定薬、婦人科向け漢方薬などを処方していくことになります。
妊娠を望みながらもPMSの症状が辛い場合は、医師にその旨を告げてご相談ください。
症状が月経(生理)の周期にともなわないのならば…
月経に関わる婦人科のいくつかの病気には、PMSと症状が似ているものもあります。つらい症状が月経周期と関わり無くあらわれる場合、PMS以外の病気である可能性もあります。そんな時には前述でおすすめした症状の記録をつけていくことによって、月経周期と関わりが見えやすくなるメリットもあります。いずれにしても自己判断せず一度は検査を受けにご来院ください。
月経に伴う不調~PMSではない病気~
月経困難症
月経開始に伴って、下腹部痛、下痢、吐き気・嘔吐といった症状が強くあらわれ、時には寝込んでしまうほどで、日常生活に大きく影響があるといった場合、月経困難症が考えられます。
PMSと異なるのは、月経期間中に症状があらわれる点です。
月経前不快気分障害(PMDD)
PMSのうちでも、特に精神的症状が強くそれによって日常生活が妨げられるような場合は、月経前不快気分症候群(PMDD)が疑われます。PMDDは英語のPreMenstrual Dysphoric Disorderの頭文字を略したものです。
PMSと同様、月経が始まる10日~1週間前よりイライラ、怒りっぽさ、抑うつ、過食、食欲が出ないといった精神的症状が強くあらわれます。
更年期障害(はじまり)
日本人女性の平均的な閉経年齢が50歳頃ですので一般的には45~55歳頃が更年期です。更年期のうち日常生活に影響がある症状があらわれる場合を更年期障害と言います。中にはPMSと似た症状があらわれる場合もあり、鑑別が難しい場合もあります。