月経困難症とは
月経の期間に、下腹部痛や腰痛といった月経痛(生理痛)、お腹の張り、吐き気や嘔吐、頭痛、下痢、疲労感、脱力感などの他、抑うつやイライラ、食欲不振といった辛い病的な症状があらわれるのが月経困難症です。
原因疾患のある器質性月経困難症と、原因疾患が無い機能性月経困難症に分けることができます。無排卵月経の場合は、これらの症状は起こりにくいことが分かっています。
月経困難症の原因
プロスタグランジンの過剰分泌
不要になった子宮内膜は剥がれ落ち、月経となって排出されます。この際、黄体を退行させ、子宮を収縮させて剥がれ落ちた子宮内膜を排出するために働くのがプロスタグランジンというホルモンです。プロスタグランジンは出産の際にも子宮を収縮させて陣痛を起こす働きがありますが、過剰に分泌されると、子宮が過度に収縮し、様々な不快な症状があらわれます。
子宮口が狭い
出産経験が無い、年齢が若いといった場合、子宮頸部から腟の奥あたりが硬く狭い状態になっていることが多く、そのため内膜や経血といった月経の内容をうまく外に排出することができない場合があります。それによって痛みを生じることや、子宮口が狭い場合は経血が逆流することで経血に含まれているプロスタグランジンが作用し、様々な不快な症状があらわれます。
心理的要因
ストレスなど、自律神経のバランスを乱してしまうといった要素や、月経に対する、辛い、痛い、面倒くさいといった悲観的になってしまう心因的要素から発症することもあります。
運動不足や冷え
運動が不足している、冬季や冷房が強いなどから身体が冷えているといった状態にあると、血流が悪くなり、痛みやむくみといった症状もあらわれやすくなります。
月経困難症の種類
機能性月経困難症(原因疾患がない)
子宮や卵巣などに炎症や腫瘍といったはっきりとした器質的な病気が認められない場合、機能性月経困難症と分類されます。初潮から1~2年経ってから症状があらわれることが多く、月経困難症の4割がこのタイプです。原発性月経困難症と言われることもあります。
器質性月経困難症(原因疾患がある)
子宮や卵巣などに炎症や腫瘍、形態的な変化などの器質的な原因がある場合、器質性月経困難症と言います。続発性月経困難症と言われることもありますが、医療用語で言う「続発性」とは原因疾患に続いて起こる事象です。初潮から5年以上経過してからあらわれることが多くなっています。
原因となる病気は以下のようなものが代表的です。
子宮内膜症
子宮内膜症は、子宮内膜と同様の組織が子宮外にできてしまう病気で、好発部位としては卵巣や骨盤内などがあります。
子宮内膜は排卵の時期にだんだん増殖して受精卵が着床しやすいようにし、受精・着床が起こらなければ、不要となった子宮内膜は剥がれ落ち、腟を通って体外へと排出されます。これが月経ですが、子宮外にできた子宮内膜組織も月経とともに剥がれてしまいます。ところが骨盤内や卵巣には剥がれ落ちた内膜を体外に排出する口がありませんので、体内にどんどん蓄積して炎症を起こし、激しい痛みやお腹の張りといった強い症状があらわれます。子宮内膜症がある女性の8割は月経困難症を伴うことが報告されています。
子宮腺筋症
子宮腺筋症は、子宮内膜の組織が何かしらの理由で子宮の筋層の中にできてしまう病気で、子宮内膜症に似ていますが、別の病気に分類されています。
筋肉の中にできた内膜組織は女性ホルモンの変動によって増殖を繰り返しますので、子宮壁がどんどん分厚くなってしまい、子宮全体も大きく肥大します。
激しい月経痛、過多月経、過多月経による貧血などの症状があらわれます。
子宮筋腫
子宮は平滑筋という筋肉でできた袋状の臓器で、その内側には子宮内膜という粘膜組織があり、外側は子宮外膜(漿膜)で保護されています。この子宮を構成する筋肉が異常増殖してできた良性の腫瘍が子宮筋腫で、原因ははっきりと解明されていません。発症した小さな腫瘍の芽がエストロゲンの影響によってゆっくりと成長して大きくなっていきます。
外膜に近いところ、筋層の内部、内膜に近いところなど、できる部位によって症状が異なりますが、特に内膜に近い部分にできた筋腫は、初期のうちから月経困難症の症状があらわれることが多く、筋腫が大きくなると出血時にレバーのような血の塊が混じって出てくることもあります。
月経困難症の検査・診断
まずは問診で、どのような症状がどのような強さで出るか、どのようなタイミングで出るかなどを詳しく伺います。その上で、症状や程度に応じて内診、血液検査、各種病原体の検査、超音波検査(経腟・経腹)などを行います。さらに器質性の病気がないかどうかを詳しく調べるためにCTなどの画像検査を行うこともあります。
これらの検査の結果から機能性のものか器質性のものかなどを判断し、それぞれに適した治療方針を検討していくことになります。
月経困難症の治療
検査の結果、原因疾患の無い機能性月経困難症であれば、対症的に鎮痛薬によってつらい症状を抑えることや、LEP(低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬)によって排卵を一時的に止めるといった治療法を検討します。
子宮や卵巣などに病気が見つかり、器質性月経困難症と診断された場合は、その病気そのものへの治療の必要性を検討します。経過観察で良い場合には、月経困難症の症状そのものへの対応として鎮痛薬などを処方するだけで良い場合もあります。器質性の病気に対する治療が必要な場合は、それぞれの病気に応じて、ホルモン薬による薬物療法や手術(腹腔鏡・開腹)などの最適な治療法を選択して治療を進めていきます。