ピルとは
一般的には錠剤タイプの経口避妊薬を指しています。女性ホルモンのエストロゲンとプロゲステロンを主成分とし、そのバランスを調整することで、避妊の効果を得ることができます。また、月経時の痛み、月経不順、月経前症候群(PMS)といった様々な月経に関連する辛い症状の緩和や月経移動などにも活用されています(月経困難症などの治療目的に使用する薬剤はLEP=低用量エストロゲンプロゲスチン配合薬と言います。この場合は健康保険適用になります)。
ピルの種類
ピルはエストロゲンの配合量によって低用量・超低用量といったエストロゲンの少ないタイプと、エストロゲンがやや多めの中用量ピルに大きく2つに分けられています。
低用量ピル
エストロゲンの含有量が少ないため、効き目は穏やかで、頭痛、吐き気、腹痛、血栓症といった特有の副作用が少なめです。そのため服用し続ける必要がある避妊目的や、月経にともなう諸症状の緩和に適しており、一般的に処方されるタイプのピルです。
中用量ピル
エストロゲンの配合量が多いため強い効力があり、特別なイベント、旅行などの際に月経予定日を移動させる目的や、性交後の緊急避妊目的に使用します。
特に緊急避妊は「アフターピル」や「モーニングアフターピル」と呼ばれているもので、望まない性行為、望まない避妊具無しの性行為、コンドームが破損した場合、1週目に3日以上ピルの服用を忘れた場合に、あくまで緊急避妊として適用します。
ピルのメリット
ピルは経口避妊薬と言われる通り、避妊目的がすぐ思い浮かびますが、近年、女性ホルモンのバランス調整効果による月経関連の様々な症状の改善に注目が集まっています。
生理痛・生理不順・子宮内膜症・排卵痛の改善
低用量ピルには排卵を抑制する効果があるため、排卵時に起こる痛み(排卵痛)が起こらなくなります。また、子宮内膜の肥厚も抑えられることによって、月経痛が無くなったり、痛みが軽減したりする、月経量が軽減する、子宮内膜症が軽減するなどの効果もあります。
PMSの改善
月経が始まる3~10日前ごろから何となく不快でイライラ、乳房が張る、全体的な体調不良があらわれるなどの精神的・身体的な症状の総称を月経前症候群(PMS)と言います。
低用量ピルを服用すれば、女性ホルモンの変動が抑えられることで、ホルモンバランスが安定し、これらの症状が起こりにくくなります。
肌荒れ・ニキビの改善
女性でも男性の10分の1程度の量、男性ホルモンであるテストステロンが生成されています。テストステロンはそれを元に女性ホルモンが作られたり、元気の素になったりしますが、一方で肌荒れやニキビの原因となることもあります。低用量ピルの服用によってテストステロンの分泌が抑えられると、それらの症状の軽減も期待できます。
避妊効果
低用量ピルの適切な服用によって得られる避妊効果は99%と報告されています。コンドームによる避妊効果は85%と報告されていますので、避妊成功率は非常に高いと言えます。
しかしながら、コンドームと異なり、性感染症の予防効果はありませんので、そのためには低用量ピルの服用中であってもコンドームを使用することが大切です。
ピルの副作用について
ピルの服用を始めてからしばらくの間は以下のような副作用があらわれることがあります。通常は2~3ヵ月程度経過すれば症状は治まっていきます。
ただし、症状が激しく辛い場合は我慢をせず、いったん服用を中止して当院までご相談ください。
重大な副作用は血栓症について
血栓症とは、血管の中で血液の流れがうっ滞し、凝固してしまうことによって、その塊がさらに血管を塞いで血流が止まってしまう病気です。ピルの服用によって低確率とはいえ、この血栓が発症することが報告されています。血栓が起こる場所によって、激しい頭痛(脳血管)や胸痛(心臓周辺の血管)、視野の狭窄(網膜)などが起こる場合もあり、またふくらはぎや太股に腫れや痛みが起こる場合もあります(脚の静脈)。確率としては非常に低いですがこれらの症状があらわれたら、我慢をせずすぐに救急対応で受診してください。
特にヘビースモーカーの方(1日15本以上が目安)はピルによる血栓症が起こりやすいとされています。
ピルを服用できない人
- 血栓症の既往症がある、血栓症になりやすい体質である方
- 1日の喫煙量が15本以上で35歳以上の方
- 閃輝暗点(視界にギザギザの光があらわえる)などの前兆がある、または片頭痛がある方
- 脂質異常症(高脂血状態)、重度の高血圧がある方
- 妊娠・授乳中である方
- 乳がんにかかっている方
ピルを飲み忘れたら
多くの低用量ピルは4週28錠が1シートになっています。
低用量ピルは毎日1錠を決まった時間に服用することを3週間続け4週目を休薬期間とします。この休薬期間の7錠は成分の含まれていない偽薬(プラセボ)です。そのため現在服用しているのが何週の何日目かが明瞭にわかるようになっています。
服用はできる限り同じ時間を保ち、予定時間より2時間以上遅れないようにしてください。
1錠の服用を忘れた場合(直前の服用からの経過が24時間未満の場合)
- 飲み忘れに気づいた時点で飲み忘れた錠剤をすぐに服用します。残りの分は予定通り服用してください。例として、朝ピルを服用するときに飲み忘れに気づいた場合は、飲み忘れた分とその日の分2錠を服用することになります。
- 1錠のみ飲み忘れた場合は緊急避妊を検討する必要はありませんが、同じ周期のうちに複数飲み忘れがある場合は、緊急避妊を検討する必要があります。
2錠以上の服用を忘れた場合(直前の実薬服用から既に24時間以上経過している場合)
- 飲み忘れたピルのうち、スケジュールに近い方の錠剤を気づいた時点で服用します。
スケジュール通りにその日の分も服用してください。つまり1日に2錠服用することになります。 - 複数の飲み忘れがあった場合、その後1週分以上連続して服用するまで性行為を控えるか、コンドームなどによる避妊を行ってください。
- 第1週に飲み忘れがあり、その直前5日以内にその他の避妊方法をとらないまま性行為があった場合は緊急避妊を検討しましょう。
- 飲み忘れが第3週であった場合は、休薬期間を設けず(プラセボを服用しない)、そのシートの実薬が終わったら、次のシートの服用を始めます。
※ピルを薬局にて受け取る際に、パンフレットが渡されます。
パンフレット内の対応方法もご参照ください。
当院で扱っているピル
目的 | 種類 | 商品名 | 価格(1か月分/1回分) |
---|---|---|---|
経口避妊薬(OC) | 一相性ピル | マーベロン(Marvelon) | 約2,000〜3,000円 |
ルナベルULD、ルナベルLD | 約2,000〜3,000円 | ||
二相性ピル | アンジュ(Ange) | 約2,000〜3,000円 | |
三相性ピル | トリキュラー(Triquilar) | 約2,000〜3,000円 | |
緊急避妊薬 (アフターピル) |
レボノルゲストレル錠 | ノルレボ(NorLevo) | 約8,000〜15,000円 |
ウリプリスタール酢酸エステル錠 | エラワン(EllaOne) | 約12,000〜20,000円 | |
ホルモン補充療法(HRT) | エストロゲン単独療法 | エストリール(Estriol)、 プレマリン(Premarin) |
約3,000〜5,000円 |
エストロゲン・ プロゲスチン併用療法 |
メノエイドコンビパッチ (Menoaid Combipatch) |
約5,000〜8,000円 | |
月経周期調整薬 | ノルエチステロン | プロベラ(Provera) | 約2,000〜3,000円 |
ニキビ治療用ピル | 低用量ピル | ヤーズ(Yaz)、 シンフェーズ(Cinfase) |
約2,000~3,000円 |