バルトリン腺のう胞とは
バルトリン腺は、腟の入り口左右にある小さな分泌腺です。
このバルトリン腺の開口部が詰まってしまうことで、内部に粘液が溜まって腫れてしまったものがバルトリン腺のう胞で、多くの場合は片側だけに生じます。
のう胞は数mmから大きくなると数cmほどになることがあります。また、時にのう胞に細菌感染がおこると炎症を起こし膿瘍となります。
バルトリン腺のう胞の原因
バルトリン腺の開口部が詰まってしまい、のう胞ができる原因は今のところはっきりとは分かっていませんが、できてしまう要因としては外傷や細菌感染、自転車のサドルや下着からの圧力などが考えられています。
細菌感染については、大腸菌やブドウ球菌といった、外陰部に常在するものが一般的ですが、その他として性感染症の淋菌などへの感染がきっかけとなることもあります。
のう胞に細菌感染を起こすと化膿して内部に膿が溜まりますが、そこに外部からの圧迫や衝撃が加わるとさらに悪化する要因となることがあります。
バルトリン腺のう胞の症状
感染していないのう胞だけの場合は、ほとんど症状があらわれることはありません。ただし大きくなってくると座ったり歩いたりする場合だけではなく、性交時にも不快感を感じるようになります。また、入浴時などに腟口の部分にしこりを感じたり、外陰部の左右どちらかが変形して見えたりすることで、気づいて受診する方もいます。
のう胞に感染が起こると膿瘍となります。その場合、痛みを強く感じるようになり、時に発熱することもあります。また、座ったり歩いたりすることで患部が擦れると圧痛を感じることもあります。膿瘍ができると、患部は赤く腫れ上がり、またおりものが生じることもあります。
バルトリン腺のう胞の検査
小さいうちは症状も無く、触れても気づかないこともあります。
しかし大きくなってくると、入浴時などに気づいたり、パートナーに指摘されたりして気づくことがあり、受診するきっかけになります。
医師が内診を行い、視診・触診でのう胞ができていることや、感染の有無などを確認することができます。のう胞からの分泌物や膿瘍内の膿などを採取して性感染症の有無などを調べます。
バルトリン腺のう胞の治療
大きさや症状などによって治療方法は異なってきます。入浴時に触れるなどで受診された場合でも、痛みや違和感といった症状がない、のう胞が小さいといった場合は、特別な治療を行わず、経過観察とします。そのような場合は自然に消失することも少なくありません。
のう胞が大きく、違和感や痛みなどで日常生活や性行為に影響があるような場合は、注射器などを使ってのう胞の内容物(粘液)を吸い出す治療を行います。
さらに大きく、歩行や性生活が困難になる場合などは手術を検討することもあります。
デリケートゾーンの腫れやできもの
バルトリン腺のう胞に似て、外陰部に腫れやしこりなどが触れるような病気としては以下のようなものがありますので、きちんと鑑別することが大切です。
尖圭コンジローマ
ヒトパピローマウイルス(HIV)に感染することで発症する病気で、性器周辺や肛門周辺などにカリフラワー状と称されるトゲトゲしたイボのようなものが多発する病気です。イボ状のできものの他に痒み、痛み、おりものの増加などの症状が出る場合もありますが、イボ状のできものだけの場合もあります。性感染症の1つに数えられています。
性器ヘルペス
ヘルペスウイルス(HSV)が性器周辺に感染することで発症する病気で、性感染症の1つに数えられますが、家族間のタオル共有などでもうつることがあります。性器周辺に小さな水疱が多発します。とくに初めてかかった場合、症状が強いことが多く、水疱が痛んで排尿が困難になるようなこともあります。再発を繰り返しますが、2回目以降の症状は軽い傾向があります。発症前の前駆症状として、外陰部や肛門周辺のチクチク・ヒリヒリとしたような違和感、鼠径部のしびれなどがあります。
毛嚢炎(もうのうえん)
毛包(けあな)に細菌が感染してしまった状態です。外陰部のムダ毛処理で毛包を傷つけてしまいそこから細菌が入り込んで炎症を起こす場合が一般的です。毛包周辺が赤く腫れて、触れると痛みを感じます。化膿すると腫れは大きくなり、痛みも増します。
外陰部腫瘍
バルトリン腺のう胞のように内部に粘液などが溜まっておらず、腫瘤や腫れがある場合は外陰部腫瘍の可能性があります。腫瘍の多くは良性のものですが、稀に外陰がんなどもありますので注意が必要です。治療は外科的切除で行うことになります。
リンパのう胞
バルトリン腺ののう胞ではなく、外陰部にリンパ液が溜まった小さな水疱状のできものができる場合があります。内容物のリンパ液を吸い出す治療や運動療法などを試みますが、大きくなりがちで、その場合は手術療法が必要になることもあります。
基本は医師による内診(視診・触診等)を通して、デリケートゾーンの状態や原因をしっかりと鑑別し、患者様それぞれに最適の治療法を選択することが大切です。